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海洋汚染の現状や、海洋保全のための施策について、自分の勉強と備忘録も兼ねて発信していく本ブログ。

今回は、海洋プラスチック問題の解決策としての生分解性プラスチックへの期待と誤解について取り上げていきます。


■この記事のまとめ
・海洋プラスチック問題の解決は、海洋保全のために不可欠と言われるほど重要視されている。
・海洋プラスチック問題の解決のために注目されているのが、自然環境で分解されるためごみとして残らない生分解性プラスチック。
・ただ、全ての生分解性プラスチックがどんな環境下でも速やかに分解されるわけではなく、生分解性プラスチックの種類ごとに分解してくれる微生物も異なる。
・素材としての耐久性や、速やかに分解しなくとも緩やかに分解していくことから扱いが難しいのが生分解性プラスチックの特徴だが、使用する際に分解を開始するタイミングを指定できるようにする研究などが進んでおり、今後に期待される。


海洋プラスチック問題対策として期待される生分解性プラスチック


■生分解性プラスチックは海洋プラスチック問題(海洋汚染問題)の解決策として期待されている

これまでの記事でも書いてきたように、海洋汚染対策は海洋プラスチック問題とは切っても切れないほど強い関連性があります。

そのため、海洋プラスチック問題の解決のために、様々な解決策が提案されていて、その中でも生分解性プラスチック関連の研究は、かなり期待の大きい分野です。

生分解性プラスチックとは、つまりは自然環境の中で微生物等によって分解されるプラスチックのこと。
以前の記事で取り上げた、寒天等を使った緩衝材も、生分解性プラスチックに近い取り組みですね。

この生分解性プラスチックを活用すれば、プラスチックの欠片が海を長期間漂流することが問題になっている海洋プラスチック問題・マイクロプラスチック問題の解決に繋がると考えられており、大きな注目を集めています。



■生分解性プラスチックは万能ではなく、種類ごとに分解される環境や微生物が違う

生分解性プラスチックを全てのプラスチックと置き換えれば、海洋プラスチック問題は解決する」と誤解されている方も中にはいらっしゃいますが、実はそう簡単な問題ではありません。

ひとくちに生分解性プラスチックと言っても、速やかに分解されるための環境は種類ごとに様々で、分解されやすい微生物の種類・密度があります

しかし、プラスチックが使われる環境は、地中・地表・水中・高温・低温・湿地・乾燥地など、あまりにも多種多様です。

そのため、全てのプラスチックを単一の生分解性プラスチックで置き換えてしまうと、うまく分解されず、結局海洋プラスチック問題の解決にならないケースが出てくると考えられています。

また生分解性プラスチックは、使用せずに保存している期間にも緩やかに分解されていくケースが多いです。
そのため長期間の使用に向かないことも課題として挙げられますし、従来のプラスチックと比べると耐久性で劣るとも言われています。





■生分解開始スイッチを持つ海洋生分解性プラスチック等、課題を解決する試みが進んでいる

まだまだ課題の多い生分解性プラスチックですが、その課題の解決のための試みもどんどん行われています。

例えば2021年に発表された群馬大学、東京大学、東京工業大学、理化学研究所、海洋研究開発機構等が関わる粕谷 健一さんのプロジェクトでは、生分解性プラスチックが分解されるタイミングをコントロールするスイッチ機能を付与した海洋生分解性プラスチックを開発しようと研究しているそうです。

この研究が実れば、海で分解されずに残ってしまう生分解性プラスチックを減らしたり、長期保存中に勝手に分解されてしまうという生分解性プラスチックの不便さが改善されることに繋がるため、研究成果が期待されますね。




■最後に

まだまだ課題が多いとは言え、生分解性プラスチックは海洋プラスチック問題の解決に大きく貢献することは間違いないと思います。
今後も様々な機関の研究にも注目して、自分の生活の中でも積極的に生分解性プラスチックの商品を使っていきます。